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【配偶者控除廃止!?】専業主婦が損?自分にあったワークスタイル

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専業主婦として家事や子育てに頑張っている皆さんを応援する税制と言って良いのが配偶者控除ですが、早ければ2017年1月よりこの制度が廃止される可能性があることを、皆さんはご存知でしたでしょうか。

まだ100%確定した訳ではないため、延期されたり、代案によって現行制度に比較的近い制度が温存されたりする可能性はまだあります。

しかしながら廃止する方向で検討されていることは間違いありませんので、現在配偶者控除の対象となっている方は制度が廃止された場合家計にどのような影響が及ぶかを理解した上で、そうなった場合の家計防衛策を事前に練っておくことが大切です。

そこで今回は配偶者控除が廃止された場合、特に主婦の皆さんがどのような働き方をすることが望ましいのか等、事例を元に解説して参ります。

(※尚本記事では配偶者控除の影響をわかりやすくするために、配偶者特別控除(配偶者の所得金額に応じて段階的に定められている控除制度。配偶者控除同様廃止される方向で検討されている)についても一体的に廃止されるものとしてシミュレーションを行います。)

 

 

そもそもなぜ配偶者控除が廃止されようとしているのか

そもそもなぜ配偶者控除は廃止されようとしているのでしょうか。

この理由は次の二点です。

配偶者控除を受けたいために働き方を抑制していた主婦層に、社会進出の機会を促すため

●共働きで夫も妻もそれぞれ税金や社会保険を納めていた(つまり配偶者控除を受けられない)世帯との税負担に対する不公平感の是正


この後詳しくお伝えしますが、配偶者控除が適応される所得金額には基準がありますので、その基準金額を超えないよう、専業主婦の皆さんがパートで働く場合には仕事量を抑制する場合が多い現状がありました。

そこで、この制度廃止によりできるだけ女性にも働いてもらい、年々減少傾向にある労働力を補って欲しいという政府の意図が背景としてあります。

また、そうなればすでに共働きをしているために配偶者控除を受けられなかった世帯との不公平感も解消に向かうであろうとの理由から、早ければ2017年度より配偶者控除は廃止することで検討されています。

 

 

 


配偶者控除が廃止されるとどうなる?

配偶者控除とは

では配偶者控除が廃止されると、具体的にどのような影響が家計に及ぶことになるのでしょうか。

そのためには配偶者控除とは何かを改めて確認しておく必要があります。

一家の大黒柱となって頑張って働いているサラリーマン世帯を応援すべく、一定の金額を課税する所得金額から差し引くことで税金を安くする制度が「控除」ですが、その控除の一つとしてあるのが「配偶者控除」です。

配偶者控除以外には基礎控除や扶養控除、医療費控除といったものがあります。

配偶者控除とは無収入もしくはパートなどの「給与所得」が103万円以下の配偶者(妻と仮定します)がいる場合に、夫側の税負担を軽くする目的で夫の課税給与所得額(但し給与所得で1,230万円以下が対象)から「38万円(+住民税は33万円)」を差し引いた上で、所得税や住民税を計算できる制度のことです。

配偶者控除」という表現であるため、配偶者側に何かの控除が及ぶと勘違いされる方もいますが、配偶者控除が適応されるのは103万円以下の給与所得がある妻の方ではなく、「夫の給与所得」に対して控除が及ぶことをまず理解しておいてください。

 

配偶者控除の影響が及ぶのは夫側のみ?!

ネット上では、「103万円の壁がなくなる」といった表現で配偶者控除の影響を説明しているサイトが多数散見されますが、この表現は完全に誤りという訳ではありませんが正確だとも言えません。

配偶者控除がなくなれば、確かに夫側の給与所得に対する38万円分の控除がなくなるので、夫側の給与所得には確実に影響は及びます。

しかしながら、妻側でみた場合には103万円には「給与所得控除」と「基礎控除」という二つの控除制度は2017年以降も適応されます。

給与所得控除とは給与所得の額に応じた控除額のことで、「65万円」が最低基準の金額として控除されます。次に「基礎控除」とは所得に対して必ず控除される金額であり、その額は「38万円」です。

従って

103万円-65万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)=0万円(課税所得)

即ち課税給与所得は「0円」となり、給与以外に所得がなければ所得税を納める必要はありません。

つまり妻側だけの給与所得に限れば、「103万円以下」には配偶者控除が廃止された後でも課税所得を0円にするという意味はあることになります。

 

夫婦全体の総所得で考えてみた場合には

配偶者控除の廃止は妻に対する課税所得という点では影響がないように思えますが、「夫婦全体の所得」で考えた場合にはこの影響は決して小さくはありません。

例えば夫の年収を500万円と仮定して、配偶者控除が廃止された場合、おおよその計算結果として次のようになります。(配偶者控除以外の控除は特に考慮しないものとします)

夫側年収500万円の場合

税率を20%として計算(課税される所得「330万円を超え695万円以下」に該当)
税率20%なら控除されていた金額の20%分が増税となるため
配偶者控除所得税)38万円×20% + 配偶者控除(住民税)33万円×20%
という計算式が成り立ちます。
そうすると、所得税分7.6万 + 住民税分3.3万となり合計で「10.9万円」、即ち約11万円もの増税となります。
つまり年収500万円・税率20%で考えた場合には、いくら103万円で妻側の課税額が0円になったとしても妻側のパート収入換算で1ヶ月分を優に超えてしまう所得がなくなることになり、決して小さな影響とは言えません。

 

 

 

 

年収103万円から120万円にすれば13万円程度の所得増になるが・・・

配偶者控除の廃止によって減少する所得を補うための対策としては、仮に妻側が所得税を支払ったとしても妻の収入を増やすことが「現時点」では堅実な方法と考えられます。

年収103万円とは月額あたり8万5千8百円前後の給与所得となりますが、例えばこの金額に月額約1万4千円程度上乗せしてシンプルに月額10万円・年収120万円にしたとします。

仮に時給が千円だったとしても、月額1万4千円は月間で14時間相当、週当たり3.5時間ですから仮に週4日パート勤めをしている場合には1日あたり1時間にも満たない労働時間数アップで実現できる数値です。

では120万円だと妻側の手取り額はおよそいくらぐらいになるかと言うと、ここから所得税、住民税(前年度の金額で評価されるため、前年度も120万円だったと仮定)、雇用保険料を差し引くと約116万円になります。

120万円の給与所得なら所得税や保険料は年間4万円程度で済みますので、それらを支払ったとしても103万円時より約13万円もの収入アップが図れます。

つまり、年収103万円を年収120万円にするだけで、配偶者控除廃止によって減る約11万円分を計算上全額カバーできることになります。

 


但し一部の方には「106万円の壁」が立ちはだかる!

ところが120万円の年収を目指した場合、現段階ではまだ一部の方ながら、今度は「106万円の壁(正確には月額報酬8万8千円以上の壁)」が立ち塞がることになります。

パートで働く一部の主婦の方とは、従業員数が501人以上いる企業へ勤務している方のことです。そのため500人以下の企業規模の会社でパートで働いている方は2016年現在で対象となっていません。

では106万円の壁とはどのような壁かと言えば、月額標準報酬で8万8千円以上となった場合には社会保険への加入が義務付けられるという壁です。

その対象になると厚生年金で年間約10万5千円、健康保険で約5万8千円、更にはもし年齢で40歳以上なら介護保険料で更に約1万円支払う必要があるため、合計での負担増額は17万円以上となってしまいます。

そうなれば、配偶者控除で減った分のカバーを目指して103万円を120万円にしても却って手取り収入は減るため、一概に損とまでは言えませんが、配偶者控除廃止によって減った世帯収入のカバーは出来なくなってしまいます。


106万円の壁の対象となった方は正社員を目指すのも一法!

では106万円の壁対象となった場合にはどうすれば良いのでしょうか。

配偶者控除が廃止されるとの前提に立てば、年収を自主的に制限する理由はなくなっていると言えます。そこで、思い切った年収アップを目指すことが有力な家計防衛策となってきます。

具体的にはパートと言う働き方をやめて、フルタイム即ち準社員、または正社員として転職をはかることです。

家事や子育ての役割分担を見直すことで互いの協力が必要ですが、夫婦とも社員として働くことで合算所得を増やすことが、配偶者控除廃止や106万円の壁によって減る夫婦二人の所得をカバーするための有望な選択肢の一つになると言えます。

 


夫婦控除への期待は禁物

最後に、配偶者控除に伴う増税感を和らげる対策として、どちらか一方の配偶者年収を控除対象とするのではなく、共働きを含めた夫婦を一つの単位として税制上の支援を行う「夫婦控除」という制度が、配偶者控除廃止と並行して検討されています。

しかしながら、配偶者控除廃止における政府側の本音としては財政的に厳しくなっている税収や社会保険の財源確保という目的があることは明白です。

そのため、配偶者控除に匹敵するぐらいの控除制度を設けて、増税感が大幅に和らぐことは考えにくいと言えます。

まだ夫婦控除制度の具体的な姿は、はっきりと明示されていない段階ですが、過度な期待は禁物であることは間違いないと言って良いでしょう。

今回の増税を乗り切るには、夫婦控除にはあまり期待せず、やはり共働きを含めた収入アップ策を検討しておくことが望ましいと言えます。

 

参考:

www.nikkei.com